チリにおける持続可能な沿岸漁業及び養殖に資する赤潮早期予測システムの構築と運用 (Monitoring of algae in Chile)
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招待した3名の日本の研究者にチロエ島カストロで講演いただきました。

ニュース
2019.09.13

  2019月初めに、伊藤喜宏 京都大学防災研究所准教授(link)、芳村圭 東京大学生産技術研究所教授(link)、中岡慎治 北海道大学大学院先端生命科学研究院特任講師(link)のお三方をチリに招待し、講演を行なっていただきました。伊藤准教授は、メキシコで実施中の地震研究プロジェクト(本MACHと同じくSATREPS国際科学技術協力プログラムのプロジェクト)の日本側リーダーです(link)。また、芳村教授、中岡講師のお二人とは、本プロジェクトで共同研究を進めていますlink)。

  93日にチロエ島カストロで開催したセミナーには、チンキウエ財団、貝養殖技術研究所(INTEMIT)、地元の小規模貝生産業者、大学の研究者や養殖関連産業の技術員の方々が参加され、活発な質疑応答が交わされました。

  セミナーでは、伊藤准教授が、メキシコの地震空白域の観測体制の構築、シミュレーションによる沿岸の町への津波の襲来予測と襲来前に高所へ避難するための最適な行動パターン、地域行政、学校、公共インフラの企業と協力した避難訓練プログラムの策定と普及活動、などをお話くださいました。本MACHプロジェクトからは日本側代表の丸山教授がプロジェクトの説明と進捗を紹介しました。

  続いて、中岡講師が、生物間の競争や増殖率を定式化することで生態系の挙動を理解できることなど、理論と実際をつなぐ研究の醍醐味と汎用性の広さを、芳村教授が、大気のモデルと海洋のモデルを組み合わせたモデル(大気海洋結合モデル)で予測精度が大きく向上すること、など、理論やモデリング、シミュレーションの背景を、初学者にわかりやすくご紹介くださいました。そして、本プロジェクトではさらに生物データを組み入れた新たなモデルを構築していくという展望を説明くださいました。

  今回のセミナーは、チンキウエ財団(Fundación Chinquihue; link)と傘下の持続的貝養殖技術普及センターCETMIS(Centro de Extensionismo Tecnológico para una Mitilicultura Sustentable; link)に多大なご協力をいただき、共催させていただきました。本プロジェクトからは、丸山教授に加え、チリ側からラフロンテラ大学モデリング・計算研究センター(link)のアンドレス教授、日本側から植木准教授、河合博士、三須業務調整員が参加しました。

(チンキウエ財団理事長Oscar Leibbrandt Fehrmannの挨拶)

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チンキウエ財団は、小規模漁業者(artisanal fisheries)や貝養殖者の発展を目指す民間の非営利組織で、地域漁業者・養殖者に様々なサービスを提供しています。CETMISは、貝養殖に必要な機器の紹介・貝養殖の生産性向上に関する技術移転・海外向けの貝製品の開発などを行なっており、近年では赤潮の影響を貝に比べてあまり受けない養殖産業の育成を目指して海藻やウニなどへの転換に必要な技術移転にも注力しているとのことです。チンキウエ財団はもともと、1989年に日本のODA(政府開発援助)で供与された漁業市場(Complejo Pesquero)を管理する団体として設立され、その後も地域養殖の発展を目指して、チリ産業振興局(CORFO)や州政府などの様々な資金を受けながら、初期の目的にこだわらず新しい方向へ展開して活動を継続しています。本プロジェクトについても継続性の観点から情報発信を長い期間実施することが大事なので、今後も財団と協力して、財団が築いてきた現場の漁業者や貝養殖業者との信頼関係を生かして、プロジェクトの社会貢献・社会還元をより効果的に実施していければと考えています。