2018年12月初めに、五條堀孝アブドラ国王科学技術大学特別栄誉教授(国立遺伝学研究所名誉教授)と今井一郎北海道大学名誉教授をチリに招待し、講演を行なっていただきました。お二人の多岐にわたる研究と深い洞察は、研究からチリ市民への貢献まで橋渡し研究を行う本プロジェクトの進め方に多大な示唆を与えてくれるものでした。
五條堀教授は、眼という極めて複雑な器官の進化過程を解明するために赤潮原因藻類でもある藻類の研究が重要であることを話され、科学上未解明の重要課題にトップレベルの研究者が取り組んで解明していくことが、周辺領域へ派生し応用的な課題の進捗につながることを強調されました。また、最先端のテクノロジーを融合して解明を進める紅海の海と陸との環境変動動態研究の最前線を紹介くださいました。
今井教授は、日本の瀬戸内海での赤潮発生の年ごとの経過をたどり富栄養化が引き金となる赤潮は法規制と制御技術の進歩で発生件数が低下したものの、移入種の新規原因藻による被害が定着している現状を紹介されました。さらに、日本でのこういった知見をもとに、チリにおいても環境に負荷をかけずに実行できる、魚類と海藻といった複数種の混合養殖手法や海底堆積物攪拌といった実際的な対処方法について話されました。
著名な両教授による講演は、我々のプロジェクトの最初の実際の研究活動となるもので、お二人には本プロジェクトの助言役として今後も積極的に関わっていただくことになっています(リンク)。次回にお二人がチリに来訪されるときには、我々の研究が成果を上げているよう邁進しなければと心を新たにした講演でした。